介護離職

「もし親や家族が要介護状態になったら…」


仕事と介護の両立が大変になってくると、 「仕事を辞めて介護に専念したら楽になるのでは」と思いがちですが、いったん介護離職すると、貯金を取り崩す無収入の日々が続き、 さらに再就職も簡単にはいかずに、後悔するというケースも多く見られます。あとで後悔しないためにも、介護離職の現状やメリット・デメリット、離職の注意点についてご紹介いたします。



■増加傾向にある介護離職者


2018年7月、総務省が公表した「平成29年就業構造基本調査結果」によると、介護をしている 人は約628万人。このうち、仕事を持つ人は約346万人で、今や6割近い人が働きながら介護を 行っています。 その一方で、過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人は約9.9万人。同じ期間に離職した人のうち、1.8%が介護等を理由に仕事を辞めています。



■介護離職のメリット・デメリット


介護を機に離職した理由上位5位グラフ

介護離職経験者1,000人が回答した介護離職理由の第1位は「仕事と「手助・介護」の 両立が難しい職場だったため」で、約6割を占めており、「自分の心身の健康状態が悪化したため」が第2位という結果でした。 また、離職時の就業継続の意向を聞いたところ、男女ともに5割強が「続けたかった」と回答しており、働き続けたかった人が多いことが分かりました。 これらの理由から見えてくる介護離職のおもなメリット・デメリットは、以下の通りです。


【メリット】

  • ・心身の負担が軽減できる
  • ・好きな仕事、やりがいのある仕事を続けられなくなる
  • ・自分(介護者)あるいは親(要介護者)が希望したとおり介護に専念できる

【デメリット】

  • ・自分(介護者)の収入が減少する
  • ・介護費用を軽減できる
  • ・介護に掛かりきりとなり、自分の自由な時間が確保できなくなる

■介護離職して後悔する理由


介護離職することで、介護者の心身あるいは経済的な負担が軽減できるはずだったのに、実際には、「精神面」が64.9%、「肉体面」が56.6%、 「経済面」が74.9%の人が、離職後に「負担が増した」と回答しているのです。 普段、多くの要介護者やその家族と接する機会の多いケアマネジャーによると、「介護離職しても何も変わらない」といいます。 それどころか、仕事を辞めて収入が減ったことで、使える介護サービスを絞らざるをえなくなり、体力的にも精神的にもストレスが貯まっていくそうです。


介護離職後の負担の変化グラフ

■介護離職で後悔しないために


要介護者が増える年齢は、おおむね75歳以上です。一定の年齢になれば、まだまだ元気と過信せず、要介護や認知症などのサインが出ていないか、こまめにチェックしておくこと、 地域の介護情報などを入手して早めに準備しておくことが大切です。また介護離職者が少しでも減少するよう、政府がさまざまな取り組みを進めています。


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